【河内長野市】直木賞作家・今村翔吾さんと歩み始めた「楠公さん」大河ドラマ誘致。アンバサダーとして観心寺で今後の展望を語る

河内長野市寺元の観心寺で、直木賞作家・今村翔吾さんの「楠公さん」大河ドラマ誘致協議会アンバサダー就任イベントが、2026年5月16日に開催されました。

会場となったのは、通常非公開の重要文化財「恩賜講堂」。現在公開中の映画『鬼の花嫁』のロケ地にもなっている建物です。

「楠公さん」大河ドラマ誘致協議会は、楠木正成・正行ゆかりの地を中心に、全国68自治体が加盟する団体です。(令和5年5月2日時点)

就任イベントには、その加盟自治体のなかから、河内長野市、富田林市、島本町、千早赤阪村、和束町、吉野町の市町村長が出席しました。

冒頭では、河内長野市長の西野修平さんが挨拶。単なる観光地としての発展ではなく、「文化観光」を重要視していると話し、その土地に息づく歴史から地域のアイデンティティを再確認し、再価値化につなげていきたいと語りました。今回の大河ドラマ誘致も、その取り組みのひとつだとしています。

また、観心寺住職の永島全教さんは、楠木正成が観心寺で弘法大師の教えを学んだとされることに触れ、「今だけ、自分だけではなく、みんなで極楽に辿り着けるように」と話されました。地域の歴史や人の想いが、時代を超えて受け継がれていくことを願うような言葉でした。

その後、本イベントの主役となる今村翔吾さんが登場すると、会場の空気が一気に沸き立ちます。

壇上では、西野市長からアンバサダー任命状の授与が行われ、今村さんから今後の大河ドラマ誘致についての展望が語られました。

会場となる恩賜講堂が、映画『鬼の花嫁』の舞台になったという話題から、今村さんが楠公さんの大河ドラマでキャスティングするなら――と、冒頭からユーモアたっぷりに話しはじめ、会場を和ませます。一方で、大河ドラマ誘致についてリアルな現状も伝えられました。今村さんは、アンバサダー就任の話を受けてから約1年間、過去の大河ドラマ作品を調べたり、関係者に話を聞いたりしながら独自にリサーチを重ねてきたそうです。

全国には、地域の歴史人物を大河ドラマ化してほしいという団体が60ほど存在するといい、そのうえで、「最終的には人智を超えた大きな流れもある」という現状を来場者に伝えます。ただ、どうなるかわからないが、これをきっかけに「地域が盛り上がるのはいいことだ」と力を込めて語り、会場には大きくうなずく人の姿も見られました。

もし大河ドラマ化が決まれば、「全部の仕事をキャンセルしてでも協力する」と笑いを交えつつも、「50話を3等分すれば、正成・正行・正儀それぞれの物語が描ける」と具体的な構想も披露。今村さんの本気度が垣間見える場面もありました。

講演では、今村さんの小説『人よ、花よ』の主人公でもある楠木正行についても語られました。今村さんは、これまで歴史小説で特定の人物を中心に描くことは少なかったそうですが、正行だけは昔から書きたい人物だったと話します。父・正成と同じルートをなぞるように進軍したとされる正行について、「父への強い想いを感じる」と語る姿が印象的でした。

楠木一族については、静岡県付近にルーツがあるとも言われているとし、正成の代より前に南河内へ移り住み、運送業などで生計を立てていたとされています。正成自身も千早赤阪村で過ごし、河内長野で学んだと伝わっています。戦術面では当時としては革新的だったと言われ、この南河内の地から歴史に名を残していくことになりました。
しかし、時代や立場によって「英雄」「悪党」と評価が大きく変わる人物でもあり、後世に盛られた逸話も少なくないといいます。

そんななかでも、本当はどういう人だったのか。どんな話をしながら、水を飲み、木陰で休み、この南河内で何を思いながら暮らしていたのか。「実際に生きていた人物として読者に感じてほしい」と、来場者へ語りかけていました。

後半には、一般応募で集まった3名の大学生との質疑応答も行われました。そのなかで、歴史資料の探し方や、資料が少ない人物像の描き方について問われると、「資料が残っている人物との関係性から人間性を読み解いていく」と説明。「自分独自の解釈を優先するより、関係性から自然に見えてくる人物像を描いている」と丁寧に答えていました。

大河ドラマ誘致という枠を超え、地域の歴史や人物像を改めて見つめ直す場にもなった今回のイベント。今村翔吾さんをアンバサダーに迎えた「楠公さん」大河ドラマ誘致協議会が、今後どのような広がりを見せていくのか注目が集まりそうです。
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