【河内長野市】燻製とウイスキー、そして“モクテル”。月夜の「BAR HUMPBACK」 に魅せられて。

2025年9月、河内長野市本町にオープンした「BAR HUMPBACK(バー ハンプバック)」。ウイスキーやカクテルとともに、燻製フードを楽しめるバーです。

店を切り盛りしているのは、ご夫婦二人。カウンターの内側には、穏やかな手つきでグラスを扱うマスターの姿があります。奥さまは、マスターお手製の燻製を使い、その香りを引き立てる料理を作っています。

店内は、カウンター8席とテーブル席が1卓。席の間隔に余裕があり、声のトーンも自然と落ち着くような空間です。バーとしては少し早めの16時オープン。この日も開店と同時に伺いました。
ウイスキーに詳しいわけではないので、「おすすめを」とマスターに伝えると、いくつかのボトルがカウンターに並びました。フレッシュな青りんごのような香りが立つもの、柑橘の甘酸っぱさを感じるもの、そして燻製に合いそうなスモーキーな一本。グラスに注がれる前から、香りの話だけで時間がゆっくり流れはじめます。

ロックでお願いすると、マスターはほんの少しだけ水を加えてくれました。ウイスキー40mlに対して、水は10〜15mlほど。アルコールの角がやわらぎ、香りが立ちやすくなるそうです。丸く削られた氷がグラスに触れるたび、「カラン」と澄んだ音が響きます。お通しに出てきたのは、たまごサンドとナッツが燻製されたもの。ひと口味わうごとに、ウイスキーを誘います。

カクテルでおすすめされたのは、珈琲豆をウォッカで仕込んだ「エスプレッソ・マティーニ」。カルーアで甘さを足した大人のカクテルで、「苦い愛」という言葉が添えられています。よく見ると、どのカクテルにも言葉が添えられていて、メニュー表を開くだけでも楽しめます。
カウンター越しに、自然とお酒の話が続きます。所作があまりにも滑らかだったので、思わず「前職もバーテンダーだったんですか」と聞くと、返ってきたのは「いえ、サラリーマンでした」という答えでした。

話を聞くと、ウイスキーやバーの雰囲気が好きで、各地の店を巡るうちに、ある一軒に通い続けるようになったそうです。そこで出会ったのが、マスターが今も“師匠”と呼ぶバーテンダー。ホテル出身で、カクテルの競技会では全国準優勝の経歴を持つ方だといいます。
その店は昼14時から開いていました。マスターは、開店と同時に入り、客足が増えるまでの時間、師匠と会話を続けていたそうです。お酒の知識だけでなく、仕事への姿勢や、お客さんとの距離の取り方も、じっくり観察していたとか。今の店が16時オープンなのは、そうした自身の経験から「話したい人が、話せる時間を残しておきたかったから」と――。

マスターは続けて話してくれました。バーテンダーは、ホテルで経験を積んで独立する人が多い世界。師匠と呼べる人がいても、特別な修業の背景があるわけではない。だからこそ、今できること、教えられたことを、ひとつずつ丁寧にやる。その積み重ねだけを、支えにしているとのこと。そう聞いて、グラスに触れる指先を眺めながら、無言でうなずいていました。

店内の一角にある木製のハンガーラック。その板は、師匠からオープン祝いとして贈られた一枚板を、半分にスライスしたものだそうです。もう半分は、自宅のベッドのヘッドボードになっています。板を見るたびに師匠の顔が浮かび、背筋が伸びる。そう話すマスターの言葉から、この店の土台にある関係性が垣間見えました。

「HUMPBACK」という名前は、もともとイベント出店時の屋号「HUMPBACK SMOKE」から来ています。はじまりは、ウイスキーを自宅で飲むようになり、おつまみとして燻製を作りはじめたことから。おすそ分けをするうちに近所で評判になり、師匠にも背中を押される形で、2020年からイベント出店を始めました。

2種類のチップで燻製した砂ずりのオイル漬け
出されている燻製料理は、奥さまが料理のイメージと素材を伝え、それに合わせてマスターが、チップの種類や燻す時間を選んでいます。二人のチームワークによって、香りが際立つ一皿に。口に運ぶ前にふっと鼻を抜け、食べた瞬間、スモーキーな香りが口に広がります。
イベントのときは、この燻製に合うアルコールを出すこともあれば、お酒を飲めない人向けに「モクテル」も用意するようになります。きっかけは、親しい友人が病気でお酒を飲めなくなったことでした。

同じ時間、同じ場所を、気兼ねなく一緒に過ごせるように。そうして生まれたのが、ノンアルコールカクテルのモクテルです。「モック(似せた)」と「カクテル」を組み合わせた言葉で、今では店の顔のひとつになっています。「飲める人も、飲めない人も楽しめるように」。その考え方は、店のキャッチフレーズにもなっています。

会社員時代、同じ職場で働いていたというお二人。出店と仕事の二足の草鞋を続けるうち、次第に気持ちの比重が出店のほうへ傾いていきました。そんな中、訪れる人に「実店舗はどこにあるんですか?」と聞かれることも増えたそうです。つながりができた出店仲間にも支えてもらったことで、お店をオープンさせることへの抵抗は、ほとんどありませんでした。店内にある額には、つながりのある仲間のステッカーが貼られています。

しかし、奥さまは、二人とも店に立つことに最初は反対していたそうです。奥さまの社交性と愛嬌は、お店には欠かせないと考えていたマスター。熱意を示し続け、最後には一緒にやることに決まりました。

そんな奥さまが、お店に出すティラミスの、原価と仕上がりのバランスで悩んでいた話があります。マスターが悩んでいる姿をそばで見守っていると、奥さまがふと口にした「これだと、ティラミスとは呼べない」という一言。結局、納得のいく形を突き通したそうです。
決めたら引かないところと、引くところ。似たようで違う二人の呼吸が、カウンターの内側と外側で、店の雰囲気をつくっています。

燻製の香りがゆっくり広がる店内で、グラスの音を聞きながら過ごす時間。「BAR HUMPBACK」は、お酒を飲む場所であると同時に、お二人でつくる空気そのものも、魅力に感じられるお店です。
- 住所
- 〒586-0015 大阪府河内長野市本町5-10 メルベーユB2
- 営業時間
- 16時〜23時30分
- 定休日
- 火、第1・第3水(不定休あり)
- 電話番号
- 0721-69-7171
- 関連リンク
※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。





